相続放棄とは、被相続人(亡くなった方)の財産や負債などすべての権利・義務を一切引き継がずに放棄する手続きです。負債が多い場合に行い、借金などの返済義務が無くなります。相続放棄の手続きから注意点を説明いたします。
相続放棄とは何か
相続放棄とは、相続人が被相続人の権利や義務を一切放棄すること
を指します。
つまり、プラスの財産(預貯金や不動産など)を一切相続しない代
わりに、マイナスの財産(借金や未払い金など)の返済義務も負わ
なくなります。
相続放棄の法的効力を発生させるためには、家庭裁判所に相続放棄の
申述をして受理される必要があります。
相続放棄を検討すべきケース
債務超過の場合
被相続人の借金や負債が資産を上回る場合、相続放棄が有効です。
プラスの財産よりもマイナスの財産が多いとき、相続放棄を選ぶこ
とで借金を引き継がずに済みます。
また、遺産分割協議に関わりたくない場合や、相続人同士のトラブルを
避けたい場合にも有効です。
その他の検討すべきケース
●被相続人が借金の保証人になっている可能性がある
●特定の相続人に遺産をすべて相続させたい
相続放棄の手続きの流れ
1.相続放棄の基本的な手続きの流れ
①財産調査と相続人の確定
被相続人の財産(資産・負債)を調査します。
戸籍謄本などを取得し、法定相続人を確定します。
②申立添付書類を準備する
戸籍謄本、住民票、被相続人の除籍謄本などが必要です。
③相続放棄申述書を作成する
裁判所のホームページから申述書をダウンロードし
必要事項を記入します。
④管轄の家庭裁判所で相続放棄の申述を行う
亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出します。
郵送も可能です。
⑤家庭裁判所から相続放棄の照会書が送付される
裁判所から質問書が届く場合があるので、内容に回答して返送します。
⑥受理されれば相続放棄申述受理通知書が交付される
問題がなければ「相続放棄申述受理通知書」が届き、手続き完了です。
必要書類と費用
必要書類
相続放棄申述書
被相続人の死亡が記載された戸籍謄本
被相続人の住民票除票(または戸籍附票)
相続放棄をする申述人の戸籍謄本
費用
収入印紙:800円分(申述人1人につき)
連絡用の郵便切手:数百円
戸籍謄本等の交付手数料:数千円程度
合計で約3,000円~5,000円程度が目安です。
重要な期限と注意点
1.期限について
相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から
3ヶ月以内に手続きを完了させる必要があります。
2.期限延長の可能性
相続財産の調査に時間がかかる場合は、家庭裁判所に「相続の承認
又は放棄の期間の伸長」の申立てができます。
3.期限を過ぎた場合の対処
特別な事情がある場合、期限を過ぎても相続放棄が認められる可能
性があります。ただし、「上申書」の提出が必要で、手続きは非常
に複雑になります。
相続放棄の注意点と失敗例
1.単純承認とみなされる行為
以下の行為を行うと、相続放棄ができなくなります
●相続財産の全部または一部を処分する
●相続財産の全部または一部を隠匿する
●期間内に限定承認や相続放棄をしない
2. 相続権の移行
相続放棄をすると、相続権は次順位の相続人に移行します。例えば
子どもが全員相続放棄した場合、相続権は被相続人の両親に移ります。
3. 財産管理義務の継続
相続放棄をしても、その時点で相続財産を現に占有している場合は
相続人や相続財産清算人に引き渡すまで管理義務が残ります。
相続放棄のメリット・デメリット
メリット
●借金や保証債務から完全に解放される
●相続トラブルに巻き込まれることがない
●精神的負担が軽減される
デメリット
●プラスの財産も一切相続できない
●一度相続放棄すると原則として撤回できない
●次順位の相続人に迷惑をかける可能性がある
●生命保険金の非課税枠が使用できない
専門家への依頼について
1.依頼を検討すべきケース
●相続放棄をすべきか判断に迷っている
●相続財産の調査ができない
●相続放棄の期限が迫っている・過ぎている
●家族関係が複雑である
2. 費用の目安
●弁護士に依頼:5万円~10万円
●司法書士に依頼:3万円~6万円
相続放棄後の注意点
1.生命保険金の受取り
相続放棄をしても、生命保険金は受取人の固有財産として受け取
ることができます(ただし、非課税枠は適用されません)。
2. 遺族年金の受給
相続放棄をしても、遺族年金は受給できます。
3. 相続放棄後の禁止事項
相続財産の処分や相続財産の隠匿・消費
これらの行為を行うと、相続放棄が無効になる可能性があります。
まとめ
相続放棄は、借金などの負債から身を守る有効な手段ですが、手続き
には期限があり、注意すべき点も多くあります。
適切な判断と手続きを行うためには、早めの準備と専門家への相談が
重要です。
特に以下の点は必ず覚えておきましょう!
●期限は3ヶ月以内
●家庭裁判所への申述が必要
●プラスの財産も相続できなくなる
●一度放棄すると撤回できない
相続放棄を検討する場合は、これらの情報を参考に、慎重に判断する
ことをお勧めします。
コメント